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北陸、金沢よりちょっとイイ文学のおはなし|山越自費出版サービス

文学のまち、「天下の書府」−金沢から数々の珠玉作品が生まれています。

銅像:室生犀星、徳田秋声、泉鏡花 室生犀星、徳田秋声、泉鏡花― 誰もが聴いたことがある北陸、金沢の誇る三文豪。
文壇に金沢ゆかりの作家が多いというのは、つとに有名なことですが、ドストエフスキーやトルストイ、チェーホフと世界の名だたる文豪を生み出したのが、冬雲がたれこめるロシアであったことを思うと、北陸出身の作家が多いというのもうなずけますね。
暗い、陰鬱とされる長い冬の気候が、逆に内に籠り思索にふける悦びや想像力、創作力をはぐくんだわけです。
北陸出身の作家が活躍したのは何も昔だけでありません。その気風は脈々と受け継がれ、今でも優れた才能を輩出しています。ここでは金沢ゆかりの作家たち、そのごく一部をご紹介しましょう。

井上 靖 いのうえ やすし (1907−1991)

言わずと知れた「天平の甍」「おろしや国酔夢譚」など、いまなお読み継がれる名作を生み出した大作家です。
北海道旭川生まれですが、昭和2年金沢の第四高等学校理科甲類に入学。20歳から22歳まで金沢で過ごしています。家業の医学を修めるつもりでしたが、柔道に明け暮れ、その間の自身をモデルに書いた小説が「北の海」です。 内灘砂丘を含めた金沢の名所が描かれています。

五木 寛之 いつき ひろゆき (1932−)

夫人が金沢市長のお嬢さんだったことを縁に金沢に滞在、執筆活動を行っていました。「青春の門」「大河の一滴」といった有名長編はもちろん、全国の寺々を訪ね歩く「百寺巡礼」シリーズのような紀行作品群に加え、最近では『世界中が「鬱の時代」を迎えたいま、「鬱」を力とすること』を訴えた香山リカ氏との対談集「鬱の力」や、失意と混迷が去来する現代社会にあってこれからどのように生きるべきかを、自身の人生に照らし、真の生き方、視点を変えた価値観を提示する秀逸エッセイも次々に発表しています。

桐野 夏生 きりの なつお (1951― )

直木賞作家桐野氏は東京育ちですが、生まれは金沢でした。日本推理作家協会賞受賞の「OUT」、直木賞受賞の「柔らかな頬」でミステリー、犯罪小説の第一人者としてその人気を不動のものとしました。一連の作品群は、常に現代社会の闇の部分をリアリティをもって描く社会派的要素が色濃く、単なる推理小説とは一線を画しています。2003年「グロテスク」で郷土ゆかりの泉鏡花文学賞も受賞しています。現在も意欲作を次々と発表していますが、お気に入りの作家としてマークしていた方も、桐野氏と金沢の意外な関係はご存じなかったかも。

唯川 恵 ゆいかわ けい (1955―)

少女小説の旗手から恋愛小説の名手として多くの女性の共感を得ている唯川氏は生粋の金沢っ子。石川県立金沢錦丘高等学校、金沢女子短期大学(現金沢学院短期大学)を卒業後、地元で10年あまりのOL生活を送っています。2002年「肩ごしの恋人」で直木賞受賞。いまや現代文学を代表する売れっ子作家です。

本谷 有希子 もとや ゆきこ (1979―)

劇団「本谷有希子」を主宰する劇作家、演出家、小説家、女優、とマルチに活躍する本谷氏は石川県白山市の出身。唯川氏と同じく石川県立金沢錦丘高等学校卒で2005年にはオールナイトニッポンのパーソナリティも務めた奇才の女性です。2007年「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を最年少で受賞。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」が映画化され、小説家としては数々の作品が三島賞や芥川賞候補となりながら、惜しくも受賞に至らず、の連続でしたが2009年、本業(?)の戯曲「幸せ最高ありがとうマジで!」で岸田國士戯曲賞を見事受賞。名実ともに明日の演劇界を担うホープとなりました。
さてさて、このように今日に至るまで多くの文学者、芸術家を輩出した金沢ですが、今なお現代文壇にきらめくような女流作家を送り出していることは、文学好きの北陸人には誇らしいことではないでしょうか。

文学界だけではなく美術界にも目を向けてみると話題の女流写真家は、これまたみな石川出身!ミスユニバース日本代表の華麗な経歴を持つ織作峰子氏、若手写真家人気ナンバーワンの梅佳代氏、そして能登半島の原風景を撮り続ける中乃波木(なか・のはぎ)氏と優れた写真家が続々です。ただしちょっと残念なのが最近は男性陣の活躍があまり見られないこと。

ここにご紹介した作家に続く次なる北陸出身の文学、芸術の星は、自費出版サイトに遊びにいらしたあなたかもしれません。